福祉制度

障害がある子どもが産まれたら

誰しもが障害児の親になる可能性がある


「この子と一緒に死んでしまおう」

障害がある子どもが産まれたら、誰しもがこの思いを一度は抱いたことがあるのではないだろうか。

私も次男が産まれた際に、正直に話すが、親が気分転換に連れていってもらったドライブで琵琶湖を前にして、「あの小さい体をこの池に沈めたら」と思ったことを今でも鮮明に思いだす。

私たちは脳性麻痺の団体なので、出産前後のトラブルが多く、思い描いていた出産から一気にどん底に落とされた親も多い。ほとんどではないだろうか。

私も当初は次男の受け入れを拒否した、いや、本能的に拒否してしまった。保健師さんに預け先はどうしたらいいのか、本当に相談した。

今、この文を読んでいる方々は、「障害児が産まれてしまったら」で悩んでいる人も多いのではないだろうか。

シンプルにお伝えすると、障害児が産まれても大丈夫、ということだ。日本の福祉制度は預け先が整備されている。乳児院、児童相談所。しかし、その制度に頼ることができるのかは、自治体、行政の役人によるところが大きい(役人の中には知識がなかったり、母性神話に頼って来たりする人もいるので注意が必要だが)。

乳児院は新生児だけでなく、小学校就学前までの乳幼児であればご利用できますが、基本的には都道府県・政令市・中核市等に設置されている児童相談所に相談していただく必要があります。乳児院は全国に144か所(2019年度)あり、約3,000名の乳幼児が利用しています。何らかの疾患や障害があったり、家族との別れで心が傷ついたりしている子どもたちに専門性の高い医療的ケアや心理的ケアを提供できることも乳児院の強みです。
(データは平成30年度全国乳児院入所状況実態調査によるもの)

https://nyujiin.gr.jp/about/

乳児院までいかなくても、レスパイトや一時預かりの制度もある。

大阪府では、在宅で生活されている医療的ケアが必要な重症心身障がい児者の方が、身近な医療機関において医療型短期入所(ショートステイ)を利用できるよう、一定の要件を満たす方を短期入所で受け入れた医療機関に対し補助金を交付する「医療型短期入所支援強化事業」を実施しています。

https://www.pref.osaka.lg.jp/shisetsufukushi/iryou-tankinyusyo/index.html

障害児の育てにくさは当たり前。行政には強い意志で伝える

 

日本はまだまだ母性神話が浸透しすぎて、家庭で見ましょう、親が見ましょうという風潮だ。でも本当にしんどいなら絶対に無理することはなく、私に育てる事は無理だと行政、周囲の人にアピールするべきだ。そうしないと親子共々不幸になってしまう。

障害児育児は親、家庭だけでみることは不可能。だからこそ、福祉サービスが充実しているのだ。

下記は厚労省が発表している虐待のリスク要因のリストだ。

(1)  リスク要因を持つ家庭への支援
[1]  リスク要因とは
ア.  保護者側のリスク要因
保護者側のリスク要因には、妊娠、出産、育児を通して発生するものと、保護者自身の性格や精神疾患等の身体的・精神的に不健康な状態から起因するものがある。
リスク要因と考えられているものを挙げると、まず望まぬ妊娠や10代の妊娠であり、妊娠そのものを受容することが困難な場合である。また、望んだ妊娠であったとしても、妊娠中に早産等何らかの問題が発生したことで胎児の受容に影響が出たり、妊娠中又は出産後に長期入院により子どもへの愛着形成が十分行われない場合がある。
また、保護者が妊娠、出産を通してマタニティブルーズや産後うつ病等精神的に不安定な状況に陥ったり、元来性格が攻撃的・衝動的であったり、医療につながっていない精神障害、知的障害、慢性疾患、アルコール依存、薬物依存等がある場合や保護者自身が虐待を受けたことがある場合が考えられる。特に、保護者が未熟である場合は、育児に対する不安やストレスが蓄積しやすい。
イ.  子ども側のリスク要因
 子ども側のリスクとして考えられることは、乳児期の子ども、未熟児、障害児、何らかの育てにくさを持っている子ども等である。
ウ.  養育環境のリスク要因
リスキーな家庭環境として考えられるものは、未婚を含む単身家庭、内縁者や同居人がいる家庭、子ども連れの再婚家庭、夫婦を始め人間関係に問題を抱える家庭、転居を繰り返す家庭、親族や地域社会から孤立した家庭、生計者の失業や転職の繰り返し等で経済不安のある家庭、夫婦の不和、配偶者からの暴力等不安定な状況にある家庭である。
また、リスキーな養育環境として考えられるものは、妊娠中であれば定期的な妊婦健康診査を受診しない等胎児及び自分自身の健康の保持・増進に努力しないことが考えられる。出産後であれば、定期的な乳幼児健康診査を受診しない等が考えられる。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/02.html

 

本当に無理なら無理する必要はない。障害児は育てにくさがあるのは当たり前。ストレスがたまるのは当たり前だ。

自治体の保健師にすぐに相談し、ここは勇気を持って強い意志で今は子どもと離れたいと伝えてほしい

私の知り合いには、出産後受け入れられず、乳児院に預けた人もいた。そして徐々に関係を構築し、数年後自分のもとに子どもを戻したケースもある。

サードプレイスを通してでもいい、今、この記事を見て、しんどい、助けて欲しいという思いの人がいたら、迷わず周囲、難しい場合はサードプレイスに連絡してほしいと思う。同じ環境のもの同士で話すことは本当に心が楽になるし、情報提供も可能だ。話すだけでもいい、しんどいなら、サードプレイスが行政に繋ぐサポートもする。

行政はできるなら、親や親族で見てもらいたいものだ。本当に強い意志がないと行政は対応してくれない。「このままだとこの子を殺してしまう」、そう伝えてもいい。本当に今、苦しいなら、今すぐ、行政に相談してほしい。

児童相談所虐待対応ダイヤル「189」とは・・・

  • 虐待かもと思った時などに、すぐに児童相談所に通告・相談ができる全国共通の電話番号です。
  • 「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」」にかけるとお近くの児童相談所につながります。
  • 通告・相談は、匿名で行うこともでき、通告・相談をした人、その内容に関する秘密は 守られます。

https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial